7芸術論 二重目的 創作と鑑賞

三 芸術活動の二重目的と創作および鑑賞

芸術活動には創作と鑑賞の二つの側面がある。芸術活動のこのような二側面は分離された別々の活動ではなくて、統一的な一つの活動の二つの側面である。すなわち創作においても鑑賞しながら行うのであり、鑑賞においても主観作用による付加創造(後述)が加えられるのである。すなわち創造と鑑賞は分けられない不可分の関係にあるのである。

それでは、なぜ芸術活動には創作と鑑賞の二側面があるのだろうか。創作は何のために、鑑賞は何のために必要なのだろうか。創作と鑑賞はなぜ不可分の関係にあるのだろうか。そのことについて考えてみよう。

統一思想から見れば、創作と鑑賞は二つの欲望に基づいてなされる実践活動である。すなわち創作は価値実現欲に基づいて、鑑賞は価値追求欲に基づいて行われる。それでは人間は何のために、二つの欲望をもつようになったのであろうか。それは二重目的を達成するためである。すなわち価値実現欲は全体目的を達成するために、価値追求欲は個体目的を達成するために、人間に与えられたのである。つまり神は、人間をして創造目的を達成させるのに必要な推進力、衝動力として、人間に欲望を与えたのである。

全体目的は、たとえ自覚されないにしても、人間の潜在意識の中にある。そして全体目的を実現するのに必要な欲望が共に、潜在意識の中に与えられているのである。だから人間は真実に生き、善の行為をなし、美の創造をして、人類に奉仕し、神を喜ばせようとするのである。そのように創作は全体目的を遂行しようとする欲望(価値実現欲)に基づいているのである。人間はまた自分自身のためにも生きている。したがって人間は、対象から価値を見いだすことによって喜びを得ようとするのである。それが価値追求欲である。鑑賞はこの価値追求欲に基づいている。そのように鑑賞は、個体目的を遂行しようとする欲望に起因しているのである。

ところで全体目的と個体目的は、神の創造目的からきている。神は喜びを得るために人間を創造された。それは神の側から見れば創造目的であるが、人間の側から見れば被造目的である。その目的には、神と全体を喜ばせようとする全体目的と自分も喜ぼうとする個体目的の二つがあるのである。

このように創作は、作者が対象の立場において、主体すなわち神と人類などの全体のために価値(美)を表す行為であり、鑑賞は鑑賞者が主体の立場において、対象である作品から価値(美)を享 受する行為である。いずれも究極的には、神の創造目的に由来するものである。ところが今日、多くの芸術家はそのような本来の立場から離れて、自己中心的な芸術に陥っているのである。それは実に嘆かわしい現状であるといわざるをえない。しかし、創作と鑑賞の真の意味が明らかになれば、芸術家は使命感をもって本来の芸術活動を行うようになるであろう。