7芸術論 原理的根拠

2020年7月1日
一 芸術論の原理的根拠

新しい芸術論は、もちろん統一原理を根拠としている。その原理的根拠の中で最も重要なのは、神の創造目的と創造性、喜びと相似の創造、授受作用などに関する理論である。

まず神の創造目的と創造性について説明する。神の宇宙創造の目的は、愛を通じて喜びを実現することであった。そのために神は、喜びの対象として宇宙を造られたのである。神が宇宙を創造されたということは、神は偉大な芸術家であって、宇宙は神の作品であるということを意味する。さらに具体的に表現すれば、神が喜びを得るために宇宙を造られたということは、直接的には人間を喜びの対象として造られたのであり、人間を喜ばせるために人間の喜びの対象として万物を造られたということを意味するのである。

人間に対する神の創造目的を人間を中心として見るときには、造られた目的すなわち被造目的となるが、それが全体目的と個体目的である。全体目的は神または全体(民族、国家、人類など個人に対する全体)に喜びを与えるということであり、個体目的は他人や全体から自分の喜びを得ることである。神は、人間がそのような被造目的を達成するように、人間に欲望を与えたのである。したがって人間は、神または全体を喜ばせながら自身も喜ぼうとする衝動(欲望)を常にもっている。人間の芸術活動は神の宇宙創造に由来しているが、創作活動は全体目的すなわち他者を喜ばせようとする欲望から出発し、鑑賞活動は個体目的すなわち自身の喜びを得ようとする欲望から出発しているのである。

神の創造性は原相における内的発展的四位基台と外的発展的四位基台の形成能力すなわち創造の二段構造の形成能力である。内的発展的四位基台の形成とは、ロゴス(構想)を形成することであり、外的発展的四位基台の形成とは、ロゴスに基づいて形状である質料を用いて万物を造るということである。神のそのような創造過程がそのまま人間の芸術活動における創作の二段構造の形成として現れる。すなわち、まず構想を立て、次に材料を用いて構想を実体化して作品をつくるのである。

次は喜びと相似の創造について説明する。すでに述べたように、神は喜びの対象として人間と万物を造られた。主体の喜びは自己の性相と形状に似た対象からくる刺激によって得られる(1)。したがって神は、神の二性性相に似るように形象的実体対象として人間を造られ、また象徴的実体対象として万物を造られたのである。これを芸術論に適用すれば、芸術家は喜びを得るために、自己の性相と形状に似せて作品を作るのであり、鑑賞者は作品を通じて自己の性相と形状を相対的に感知して喜ぶという論理になる。

最後に授受作用について説明する。神において性相と形状は、主体と対象の相対的関係のもとで授受作用を行って合性体または繁殖体を成している。繁殖体を成すとは、万物を創造するということである。神の原相内のこのような授受作用を芸術論に適用すれば、創作は主体(芸術家)と対象(素材)の授受作用によって行われ、鑑賞も主体(鑑賞者)と対象(作品)の授受作用によって行われるということになる。したがって創作においても鑑賞においても、主体のもつべき条件と対象のもつべき条件が必要となるのである。価値論において述べたように、価値(真善美)は主体的条件と対象的条件との相対関係によって決定されるからである。