1原相論 構造 授受作用と四位基台

2021年8月25日
(一) 授受作用と四位基台
(1) 性相と形状の授受作用

性相と形状の相対的関係

『原理講論』の創造原理には、万物は「性相と形状による二性性相の相対的関係によって存在しており」(四四頁)、また「陽性と陰性の二性性相の相対的関係を結ぶことによって存在するようになる」(四三頁)と書かれている。これは万物の第一原因である神が性相と形状および陽性と陰性の二性性相の中和的主体であるからである(四六頁)。言い換えれば、万物は相似の法則によって創造されたのであるから、みな例外なく神の二性性相に似ているのである。

ここで相対的関係とは、二つの要素や二つの個体が互いに向かい合う関係をいう。例えば二人の人間が対話するとき、または商品を売買するとき、対話や売買がなされる前に、二人が互いに向かい合う関係がまず成立しなければならない。それが相対的関係である。そしてそのような相対的関係は、必ず相互肯定的な関係でなければならず、相互否定的であってはならない(18)。

そのような相対的関係が結ばれるとき、何かを授受する現象が起こる。人間は相互に絶えず、言葉、金銭、力、影響、愛などを授け受けしている。自然界では天体間の万有引力、動物と植物間の二酸化炭素と酸素の交換などが行われている。そのように両者が何かを与え受ける現象を授受作用という。ところで相対的関係が成立したからといって、必ず授受作用が行われるのではない。両者の間に相対基準が造成されなければならない。相対基準とは、共通の基準すなわち共通要素または共通目的を中心として結ばれた相対的関係を意味する。したがって正確にいえば、相対的関係が成立して相対基準が造成されれば、その時に授受作用が行われるのである。

神の性相(本性相)と形状(本形状)の間にも、この原則によって授受作用が行われる。すなわち性相と形状は共通要素(心情または創造目的)を中心として相対的関係を結び、相対基準を造成して授受作用を持続するのである。性相が形状に与えるのは観念的なものと心情的なものであり、形状が性相に与えるのはエネルギー的要素(前エネルギー)である。このような性相と形状の授受作用によって、神の属性は中和体(合性体)を成しているか、被造物(新生体)を生じるのである。

性相と形状の授受作用とは何か

原相において、性相と形状が相対的関係を結べば、授受作用が行われるが、すでに述べたように、そのとき、必ず一定の共通要素が中心となって相対基準が造成されなければならない。神において、中心となる共通要素は心情またはその心情を土台とした創造目的である。そして授受作用を行えば、必ず一定の結果を得るようになる。そのように性相と形状の授受作用には必ず一定の中心と一定の結果が伴うのである。心情が中心のとき、結果として合性体または統一体が現れ、目的が中心のとき、結果として新生体または繁殖体が現れる。ここで合性体とは一つに統一された形態をいい、新生体とは創造された万物(人間を含む)をいう。したがって原相において、新生体の出現は万物の創造を意味するのである。

合性体と新生体の概念

ここで被造世界における合性体と新生体の概念を説明する。被造世界において、合性体は万物の存在、生存、存続、統一、空間運動、現状維持などを意味し、新生体は新しく出現または産出される結果物を意味するのであり、新しい性質や特性、あるいはそのような性質や特性をもった新要素、新個体、新現象を意味する。このような新生体の出現は、被造世界においては、とりもなおさず発展を意味するのである。

被造世界において、万物が存在、生存、存続し、運動、発展する現象が現れるのは、大きくは天体から小さくは原子に至るまで、無数の個体相互間において、原相内の性相と形状の間の授受作用と同様な授受作用が行われているからである。これは創造の相似の原則に従って、個々の万物は神の属性に似ており、万物の相互関係と相互作用は原相の構造、すなわち性相と形状の相対的関係と授受作用に似ているからなのである。言い換えれば、すべての被造物が存在、生存、運動、発展するためには、必ず原相内の授受作用に似なければならないのである。

授受作用の特徴は円満性、調和性、円滑性である

原相内の授受作用は、心情を中心とするときも、目的を中心とするときも、円満性、円和性、調和性、円滑性がその特徴である。心情は愛を通じて喜ぼうとする情的な衝動であり、心情は愛の源泉である。したがって心情が中心の時には愛がわき出るようになる。その愛の授受作用が円満なのである。目的が中心のときも同じである。創造目的は心情を土台として立てられるからである。

そのように原相内の授受作用は円満性、調和性、円滑性をその特徴とするために、そこには矛盾、対立、相 衝のような現象は存在することができない。言い換えれば相互作用に矛盾、対立が現れるのは、そこに心情や目的のような共通要素としての中心がないためであり、愛がないからである。つまり外的にいくら授受作用を行っても、愛が中心とならない限り、その作用は調和性、円和性を現すことができず、むしろ対立、相 衝が現れやすいのである。

この原相における授受作用の円和性、調和性の理論は、数多くの現実問題の解決のまた一つの基準となる。なぜならば今日の世界の大混乱は、数多くの相対的関係が相衝的な関係になっているところにその原因があるからである。すなわち国家と国家との関係、イデオロギーとイデオロギーの関係、共産陣営と自由陣営の関係、民族と民族の関係、宗教と宗教の関係、政党と政党の関係、労使関係、師弟関係、父母と子女との関係、夫婦関係、対人関係など、無数の「相対的関係」が相衝現象を現しているのである。このような無数の相衝関係の累積が、今日、世界の大混乱を引き起こしているのである。したがって、このような世界的な混乱を収拾する道は、相衝的な相対的関係を円和の関係、調和の関係に転換させることであり、そのためには各相対的関係が神の愛を中心とした授受作用の関係にならなくてはならないのである。それゆえ原相内の授受作用の円満性、調和性、円滑性の理論は、また一つの現実問題解決の基準となるのである。

(2) 四位基台の形成および主体と対象

四位基台とは何か

性相と形状の授受作用には、先に述べたように必ず中心(心情または目的)と結果(合性体または新生体)が伴うために、授受作用には必ず中心、性相、形状、結果の四つの要素が関連するようにな(19)る。この四つの要素の相互関係は位置の関係である。すなわち授受作用において、中心、性相、形状、結果は一定の位置を占めたあと、互いに関係を結んでいると見るのである。授受作用がなされるときの、このような四つの位置の土台を四位基台という。授受作用は、原相においても被造世界においても、またいかなる類型の授受作用であっても、例外なく、この四位基台を土台として行われる。したがって、この四位基台は人間を含む万物が存在するための存在基台でもある。原相における授受作用と四位基台を図で表すと図1—4のようになる。

性相と形状が授受作用をするとき、両者は同格ではない。すなわち格位が異なるのである。ここで格位とは資格上の位置をいうが、資格とは主管に関する資格を意味するのである(『原理講論』一三一頁)。実際、格位とは能動性に関する位置をいうのであって、性相と形状が格位が異なるということは、性相は形状に対して能動的な位置にあり、形状は性相に対して受動的な位置にあることを意味するのである。そのとき、能動的位置にある要素や個体を主体といい、受動的な位置にある要素や個体を対象という。したがって性相と形状の授受作用において、性相が主体、形状が対象の立場になるのである。

四位基台とは、中心、主体、対象、結果の四つの位置からなる基台であって、いかなる授受作用も必ずこの四つの位置からなる四位基台に基づいて行われる。四位基台に基づいてあらゆる授受作用が行われるということは、いかなる授受作用においても、中心、主体、対象、結果という四つの位置は固定不変であるが、その位置に立てられる実際の要素は様々であることを意味する。

例えば家庭的四位基台において、中心の位置には家訓や家法あるいは祖父母が立てられ、主体の位置には父が、対象の位置には母が、そして結果の位置には家庭の平和や子女の繁殖などが立てられる。また主管的四位基台、例えば企業活動においては、中心の位置には企業の目標や理念が立てられ、主体の位置にはいろいろな人的要素(管理職や従業員)、対象の位置には物的要素(機械、原資材)、そして結果の位置には生産物(商品)が立てられるようになる。また太陽系においては、中心は創造目的、主体は太陽、対象は惑星、結果は太陽系である。人間においては、中心は創造目的、主体は心、対象は体、結果は人間(心身一体)である。このように四位基台において、実際に立てられる要素(定着物という)は様々であるが、四つの位置だけは常に中心、主体、対象、結果として固定不変なのである(20)。

主体と対象の概念

次は、主体と対象の概念をより具体的に説明する。そうすることによって授受作用の性格がより具体的に把握されるからである。先に主体は「能動的」な位置にあり、対象は「受動的」な位置にあるといったが、これをもう少し具体的に説明すれば、主体が「中心的」なとき、対象はそれに対して「依存的」であり、主体が「動的」なとき、対象はそれに対して「静的」であり、主体が「積極的」なとき、対象はそれに対して「消極的」であり、主体が「創造的」なとき、対象はそれに対して「保守的」である。そして主体が「外向的」なときには対象は「内向的」である。

被造世界において、大きくは天体から小さくは原子に至るまで、このような主体と対象の関係は限りなく多い。例えば太陽系における太陽と惑星の関係、原子における陽子と電子の関係は中心的と依存的の関係であり、動物の親と子、保護者と被保護者の関係は動的と静的の関係であり、指導する者と指導される者、与える者と受ける者の関係は積極性と消極性の関係または能動性と受動性の関係である。また家庭生活において、絶えず家庭の繁栄を図る夫は、創造的または外向的であり、家庭を内的に、こまめに切り盛りしていく妻は、それに対して保守的または内向的である。

ところで被造世界において、主体と対象の概念は相対的なものである。たとえ一個体が主体であるといっても、その個体の上位者に対しては対象となり、たとえ一個体が対象であるといっても、その個体の下位者に対しては主体となるのである。

主体と対象の格位は異なる

そのように主体は対象に対して相対的に中心的、動的、積極的、創造的、能動的、外向的であり、対象は主体に対して依存的、静的、消極的、保守的、受動的、内向的である。被造世界における、そのような主体と対象の差異の根源は原相内の四位基台の主体と対象の格位の差異にあるのである。

主体と対象の間においてのみ授受作用が行われる。すなわち格位の差がある所に授受作用が行われる。言い換えれば、二つの要素または個体が同格の場合は授受作用が行われず、むしろ反発が起こりやすいのである。陽電気と陽電気の間に行われる反発がその例である。

主体と対象の格位の差は秩序を意味する。したがって秩序のある所においてのみ授受作用が行われるという結論になる。このような主体と対象の授受作用の理論は現実問題解決のまた一つの基準となる。すでに指摘したように、今日、世界は収拾のつかない大混乱に陥りつつあるが、その理由はほとんどすべての相対的関係が円満な授受関係になりえず、相 衝関係になってしまったからである。言い換えれば、相対的関係が主体と対象の関係にならないで、主体と主体の反発の関係になってしまったからである。

したがって、世界の混乱を収拾する道は秩序を正すことであり、秩序を正すためには主体と主体の相衝的な関係を調和的な関係に転換させなければならない。そのためには、主体と対象の関係の必然性または当為性が明らかにされなければならない。ここに主体と対象の関係の基準または根拠が必要となる。それがまさに原相内の四位基台理論、または主体と対象の授受作用の理論なのである。このようにして、原相における主体と対象に関する理論も現実問題解決の基準となることが分かる。

相対物と対立物

最後に、主体と対象に関連して、相対物と対立物の概念について述べる。主体と対象の原理的関係は目的を中心とした相対的関係であるために、調和的であり、相衝的ではない。二つの要素または二つの個体の関係が調和的であるとき、この二つの要素または個体を統一思想では相対物といい、その関係が相衝的であるときはこの二つの要素または個体を対立物という。相対物の間には調和があって発展がなされるが、対立物の間には相衝と闘争があって発展が停止するか、破綻をきたすだけである。共産主義は矛盾の理論、対立物の理論である唯物弁証法によって、政治、経済、社会、文化を変革しようとしたために、結局収拾のつかない破綻をきたしてしまったのである。

目的を中心とした相対物(主体と対象)の授受作用によって発展はなされるのであり、目的のない対立物の相衝作用によっては決して発展はなされない。このようにして相対物の理論は、今日の共産主義の混乱のみならず、自由世界の混乱までも根本的に収拾する方案になる。したがって、相対物の理論もまた一つの現実問題解決の基準になるのである。次は、四位基台の種類に関して説明する。