8歴史論 同時性摂理の法則

(七) 同時性摂理の法則

過去の歴史において起きた一定の摂理的事件が、時代ごとに反復して現れることを同時性摂理の法則という。同時性の関係にある摂理的時代は、中心人物、事件、数理的期間などにおいて、よく似た様相を示す。これは復帰歴史において、ある摂理的中心人物がその責任分担を果たさなかったとき、その人物を中心とした摂理の一時代は終わってしまい、一定の期間を経たのちに、類似した他の人物が立てられて、前の時代の摂理を蕩減復帰するために、同様な摂理の役事が反復されるためである。ところが、そのとき、復帰摂理の延長とともに、蕩減条件が次第に加算されて現れるので、完全に前の時代と同じように反復するのではない。ただ次元を高めた形で反復する。その結果、歴史は螺旋形を描きながら発展するようになるのである。

それでは同時性摂理の法則はどのように歴史に作用したのであろうか。アダムからアブラハムまでの二千年間(復帰基台摂理時代)の家庭を中心とした復帰摂理が失敗することによってメシヤが降臨できなかったので、それに対する同時性摂理として、アブラハムからイエスまでの二千年間のイスラエル民族を中心とした復帰摂理(復帰摂理時代)が同時性摂理として展開したのである。またアブラハムからイエスまでの二千年間のイスラエル民族を中心とした復帰摂理がイエスの十字架によって失敗したので、イエス以後、今日までの二千年間のキリスト教を中心とした復帰摂理(復帰摂理延長時代)が再びそれに対する同時性摂理として展開したのである。ここでアブラハムからイエスまでの二千年間と、イエスから今日までの二千年間の、二つの時代における同時性の内容を整理すれば、表8—1のようになる。

歴史の中に同時性を見いだしたのはシュペングラーであった。彼は、すべての文化は同一の形式に従って発展するのであり、したがって二つの文化の間には対応する類似した事象が現れるといい、対応する事象を「同時的」であると呼んだ(10)。

シュペングラーとほぼ同じころに、歴史の同時性を発見したのがトインビーであった。トインビーはツキディデスを講義しながら、古代ギリシアの歴史と近代西洋史が同時代的であるという事実を把握したと、次のように語っている。

一九一四年という年が、オックスフォード大学で古典ギリシア史を教えていたわたしをとらえた。一九一四年八月、紀元前五世紀の歴史家ツキディデスは、いまわたしをひっつかもうとしているのと同じ経験をすでにもっていたのだという考えがわたしの心にひらめいた。彼は、わたしと同様に、自分の属する世界が政治的に分割されて生じたところの諸国家がはじめた骨肉相食む大戦争によってつかまれていたのだ。ツキディデスは、彼の世代の大戦争が彼の世界にとって画期的なものであることを予見していた。そしてその後の経過は、彼が正しかったことを証している。わたしはいま古典ギリシア史と近代西洋史が、経験という点では相互に同時代的であることを見た。この二つのコースは平行している。これらは比較研究できる(11)。

このようにトインビーは古代ギリシア歴史と近代西洋史を同時性として扱ったが、統一史観から見れば、古代ギリシア史はメシヤ降臨準備時代であり、近代西洋史はメシヤ再降臨準備時代であり、共にメシヤを迎える準備時代という点において、同時性の本質的な意義があったのである。