7芸術論 従来の美の類型

(二) 従来の美の類型

美学において、基本的な美の類型とされたのは、優美(Grazie)と崇高美(Erhabenheit)である。優美とは、全く肯定的に、直接的に、快感を与える美であり、均整のとれた調和の美である。一方、崇高美とは、高くそびえた山とか、逆巻く荒々しい波涛のように、驚異の感動、畏敬の感情などを与える美である。

カントはさらに、美(優美)には自由美(freie Schönheit)と附庸美(anhängende Schönheit)があるとした。自由美とは、一般的に誰でも共通に感じる美であって、何ら特定の概念によって拘束されない美をいう。附庸美とは、着るのにふさわしく、あるいは住むのにふさわしいがゆえに、美しいと感じられるような、ある目的(あるいは概念)に依存する美をいう。その他、一般的に芸術論で挙げられているものとして、純粋美(Reinschöne)、悲壮美(Tragische)、滑稽美(Komische)などがある。

しかしこのような従来の美の類型は経験を通じてなされたものであって、何を基準として分類されるのか曖昧である。それに対して統一芸術論における美の類型は、すでに述べたように、明確な原理、つまり愛の類型に基づいているのである。